
誤解されやすいですが、2023年には「空振り」に関するルール改定は行われていません。現在適用されている空振りのルールは、2019年にR&AおよびUSGAによって行われたゴルフ規則の大幅な改定を基礎としています。
本記事では、この2019年改定に基づく最新ルールをわかりやすく解説し、空振りにまつわる疑問やトラブルへの対処法を詳しく紹介していきます。
ゴルフのラウンド中、ここぞという場面でクラブがボールをかすめもしなかった「空振り」。経験したことがある方も多いのではないでしょうか。
この記事では、空振りの基本的なルールから、よく似た素振りと空振りの違い、そして初心者が特に不安に感じるティイングエリアでの空振りに対する正しい処置まで、分かりやすく解説します。
さらに、空振りから派生しがちなOBのカウント方法や次は何打目になるか、ボールが見つからないロストボールの正しい措置、もし他人の球を打つ誤球してしまったらどうなるかといった、複雑なルールの疑問にもお答えします。
また、技術的な側面にも目を向け、そもそも空振りする原因と対策、そしてチョロを防ぐコツやダフらないようにするにはどうすれば良いかという実践的なアドバイスも提供します。木の根元など、アドレスできない、または打てない状況に陥った際の救済方法を解説することで、あらゆるトラブルに冷静に対処できる知識が身につきます。
- 2019年改定に基づく空振りの基本ルールと現在の扱い
- OBやロストボールなど空振り後のトラブル対処法
- 空振りに似たミスショットとの違いやペナルティ
- スイングの改善に繋がる空振りの原因と具体的な対策
2023年は空振りのルール改正なし|2019年改正に基づく現在の規則
- ティイングエリアでの空振りはどうなる?
- 素振りと空振りの違いは打つ意思の有無
- OBのカウント方法と次は何打目になるか
- ロストボールの正しい措置とペナルティ
- 誤球してしまったらどうなる?罰則を解説
- アドレスできない、打てない救済方法を解説
ティイングエリアでの空振りはどうなる?

ティショットで力んでしまい、ボールに当たらず空振りしてしまった経験は、多くのゴルファーが一度は通る道かもしれません。この場合、ルール上どう扱われるのかを正確に理解しておくことが大切です。
結論から言うと、ティショットの空振りは1打としてカウントされます。しかし、ボールがティから落ちただけで、まだティイングエリア内に残っている場合は、ペナルティなしでボールを拾い上げ、再度ティアップして打ち直すことが可能です。この場合、次に打つショットは2打目となります。
これは、2019年のゴルフ規則改定で明確に定められたルール(規則6.2b)です。このルールにより、プレーヤーはティイングエリア内にあるインプレーの球(ストローク後の球)に対して、2つの選択肢を持つことになります。
- ボールが止まった場所から、あるがままの状態で次のショットを打つ。
- ペナルティなしでそのボールを拾い上げ、ティイングエリア内の好きな場所から再度ティアップして打つ。
したがって、空振り後にボールがティイングエリアの前方に少し転がったとしても、その範囲内であれば無罰で拾い上げて打ちやすい場所に再設置できます。以前のルールでは複雑な判断が必要なケースもありましたが、現在のルールはよりシンプルで分かりやすくなっています。
素振りと空振りの違いは打つ意思の有無

「今のは素振り?それとも空振り?」この判断に迷う場面がありますが、両者を分ける基準は非常にシンプルです。それは、プレーヤーに「ボールを打つ意思があったかどうか」という一点に尽きます。
ゴルフ規則における「ストローク」とは、「球を打つために行われるクラブの前方への動き」と定義されています。このため、ボールを打つという明確な意図を持ってクラブを振ったのであれば、たとえボールに当たらなくても「ストローク」と見なされ、1打としてカウントされる「空振り」になります。
一方で、スイングの感触を確かめるための練習スイング、つまり「素振り」には、ボールを打つ意思が含まれていません。ですから、素振りはストロークとは見なされず、打数にもカウントされないのです。
素振り中にボールに当たってしまったら?
もし素振り中にクラブが誤ってボールに当たってしまい、ボールが動いてしまった場合でも、そこに打つ意思がなければストロークにはなりません。このケースではペナルティはなく、動いてしまったボールを元の位置にリプレース(置き直す)してプレーを再開します。
このように、プレーヤーの「意図」がルール上の判断を左右するため、自分の行動を正しく認識し、必要であれば同伴者に状況を説明することが、スムーズなプレー進行の鍵となります。
OBのカウント方法と次は何打目になるか

OB、つまり「アウトオブバウンズ」は、プレーが禁止されている区域にボールが完全に出てしまった状態を指します。空振りした後のショットがOBになってしまうと、スコア計算が複雑に感じられるかもしれません。
OBの基本的なペナルティは「1罰打」です。そして、元の場所から打ち直す「ストロークと距離の救済」という処置をとります。これを具体的な打数で見ていきましょう。
例えば、ティショット(1打目)を打ち、それがOBになったとします。この場合、1打罰が加算され、ティイングエリアからもう一度打ち直すことになります。この打ち直しのショットは、「最初の1打」+「OBの1罰打」+「打ち直しの1打」で、合計「3打目」として扱われます。
セカンドショット以降でOBになった場合も考え方は同じです。例えば、2打目がOBになった場合は、1罰打を加えて、2打目を打った場所の近くから打ち直します。このショットは「4打目」となります。
プライベートラウンドでのローカルルール
公式競技では上記の処置が基本ですが、友人とのラウンドなどではプレーの進行をスムーズにするためのローカルルールが採用されることが多くあります。
- プレイング4(前進4打): ティショットがOBだった場合に、前方に設置された特設ティから4打目としてプレーを再開できるルールです。
- 前進2打罰: OBになったボールが境界線を横切ったと思われる地点の近くのフェアウェイから、2打罰を加えてプレーを再開できるルールです。この場合、ティショットがOBなら4打目、セカンドショットがOBなら5打目となります。
これらのローカルルールはゴルフ場によって設定が異なるため、プレー前に確認しておくと良いでしょう。
ロストボールの正しい措置とペナルティ

打ったボールが林や深いラフに入ってしまい、見つからなくなることを「ロストボール(紛失球)」と呼びます。ボールを探し始めてから「3分以内」に見つけられなかった場合、そのボールはロストボールとして扱われます。
ロストボールのペナルティと処置は、基本的にOBの場合と同じです。つまり、「1罰打」を加えて、直前にショットを打った場所から打ち直すことになります。
この処置で最も注意すべき点は、プレーの遅延です。ボールが見つからない可能性を感じた場合は、ボールを探しに行く前に「暫定球を打ちます」と同伴者に宣言し、あらかじめボールをもう1球打っておくことがマナーとして強く推奨されます。
暫定球を打たずにボールを探しに行き、結果としてロストボールが確定してしまうと、また元の場所まで戻って打ち直さなければなりません。これは大幅な時間のロスに繋がり、後続の組にも迷惑をかける原因となります。
OBの場合と同様に、プライベートなラウンドではプレー進行を優先し、ボールがなくなったと思われる場所の近くから2罰打を加えてプレーを再開するローカルルールが適用されることもあります。どちらのルールを適用するかは、同伴者と相談して決めると良いでしょう。
誤球してしまったらどうなる?罰則を解説

コース上で自分のボールだと思って打った球が、実は同伴者や他の組の人のボールだった、というケースを「誤球」と言います。これはゴルフ規則において重大な違反とされており、厳しいペナルティが科せられます。
ストロークプレーの場合、誤球には「2打罰」が科せられます。誤球に気づいたプレーヤーは、まずスコアに2打罰を加えなければなりません。そして、間違って打ったストロークはカウントせず、自分の正しいボールを見つけて、そこからプレーをやり直す必要があります。
この処置を怠り、誤球したボールのままプレーを続け、次のホールのティショットを打ってしまうと、そのプレーヤーは「競技失格」という最も重い罰則を受けることになります。
マッチプレーの場合は、その時点でそのホールの負け(ロストオブホール)が確定します。
誤球を防ぐための対策
誤球はうっかりミスで起こりがちですが、少しの注意で防ぐことができます。
- ボールに印をつける: 自分だけのマークやイニシャルをマジックペンで書き込むのが最も効果的です。
- 打つ前に確認する: 特にラフや林の中など、ボールが密集しやすい場所では、打つ前に必ず自分のボールのブランド、番号、そして印を確認する習慣をつけましょう。
- 同伴者と確認する: 同じブランドのボールを使っている場合は、スタート前にお互いのボール番号を確認し合うことも有効です。
これらの対策を徹底し、ペナルティを未然に防ぐことが求められます。
アドレスできない、打てない救済方法を解説

ボールが木の根元や、深い茂みの中、あるいは急な斜面など、物理的にスイングができない場所に止まってしまうことがあります。このような状況で無理に打とうとすると、クラブを傷つけたり、怪我をしたりするリスクがあります。
こうしたプレー不可能な状況に陥ったとき、ゴルファーは「アンプレヤブル」を宣言することで、1罰打のもとに救済を受けることが可能です。アンプレヤブルは、プレーヤー自身の判断でいつでも宣言できます。
アンプレヤブルを宣言した場合、以下の3つの救済オプションから1つを選択してプレーを再開します。
- ストロークと距離の救済: 直前にショットを打った場所に戻り、1罰打で打ち直す。
- 後方線上の救済: ボールがあった地点とホール(ピン)を結んだ後方線上に下がり、その線上の好きな場所にドロップしてプレーする。これも1罰打です。
- ラテラル救済: ボールがあった地点から、ホールに近づかない2クラブレングス(ドライバー2本分の長さ)以内にドロップしてプレーする。これも1罰打です。
どのオプションを選択するかは、状況によって有利不利が変わるため、冷静に判断することが求められます。例えば、後方線上に下がると深いラフに入ってしまう場合はラテラル救済を選ぶなど、次のショットが打ちやすい場所を確保することがスコアメイクの鍵となります。
2023年のゴルフのルール改正はなかった空振りの原因と対策
- 根本的な空振りする原因と対策
- 空振りに似たミス、チョロを防ぐコツ
- ダフらないようにするにはどうすればいい?
- 空振りのルールと対策|重要ポイントのまとめ
根本的な空振りする原因と対策

空振りは、ルール上のペナルティだけでなく、精神的なダメージも大きいミスです。このミスを減らすためには、その原因を理解し、適切な対策を講じることが不可欠です。空振りの原因は、主に「技術面」と「メンタル面」に分けられます。
技術的な原因と対策
技術的な原因の多くは、スイングの基本が崩れていることに起因します。
- ヘッドアップ: ボールの行方が気になり、インパクトの前に顔が上がってしまう現象です。これによりスイング軌道がずれ、空振りに繋がります。対策としては、「インパクトの音が聞こえるまでボールがあった場所を見続ける」という意識を持つことが効果的です。
- スイング軸のブレ: 体が左右に大きく揺れたり、上下動したりすると、クラブヘッドが正しい位置に戻ってきません。対策としては、安定した下半身を意識し、体の回転でスイングする練習を繰り返すことが考えられます。
- 不適切なライへの対応: 傾斜地や深いラフなど、不安定な場所では通常のスイングが難しくなります。このような状況では、無理にフルスイングせず、グリップを短く握ってコンパクトに振るなど、確実性を優先した対応が求められます。
メンタル的な原因と対策
プレッシャーがかかる場面では、メンタルがスイングに悪影響を及ぼすことがあります。
- 力みすぎ: 「飛ばしたい」「失敗したくない」という気持ちが強すぎると、体に不要な力が入り、スムーズなスイングを妨げます。対策としては、プレー前に深呼吸をしてリラックスすることや、「空振りしても次の1打で取り返せばいい」とポジティブに考えることが大切です。
- 集中力の欠如: 周囲の視線や雑念に気を取られると、スイングへの集中が途切れます。ショットに入る前の一連の動作(ルーティン)を決めておき、それに集中することで、外部からの影響を遮断しやすくなります。
これらの原因を一つずつ見直し、練習場で意識的に修正していくことで、コースでの空振りを大幅に減らすことが可能になるでしょう。
空振りに似たミス、チョロを防ぐコツ

チョロとは、クラブヘッドがボールの上半分(頭)を叩いてしまい、ボールがゴロになって少ししか転がらないミスのことです。空振りと同様に、スコアに大きな影響を与えるだけでなく、精神的なショックも大きいミスショットと言えます。
チョロが発生する主な原因は、スイング中に体が伸び上がってしまったり、腕の力だけでボールを打ちにいこうとする「手打ち」にあります。これを防ぐためには、いくつかのコツがあります。
まず、アドレス時の前傾姿勢をインパクトまでキープする意識が不可欠です。ボールをしっかり見続けることはもちろんですが、特にボールの「手前側」に意識を集中すると、体が起き上がりにくくなります。
次に、グリップを握る力、いわゆるグリッププレッシャーを適度に緩めることも効果的です。グリップを強く握りすぎると、腕や肩に力が入り、スムーズな体の回転が妨げられて手打ちの原因となります。小鳥を優しく包むようなイメージで、リラックスして構えることが推奨されます。
さらに、スイング全体のリズムを一定に保つことも大切です。特にバックスイングを急ぎすぎると、ダウンスイングの軌道が不安定になりがちです。ゆったりとしたリズムでバックスイングを開始し、体の回転を使ってクラブを振り抜くことを心がけることで、チョロの発生は格段に減少するはずです。
ダフらないようにするにはどうすればいい?

ダフリとは、ボールの手前の地面をクラブで叩いてしまうミスのことです。地面の抵抗でヘッドスピードが大幅に落ちるため、ボールが全く飛ばず、これもまたスコアを崩す大きな原因となります。
ダフリの最も一般的な原因は、インパクト時に体重が右足に残りすぎてしまう「体重移動の失敗」です。スイングの最下点がボールの手前に来てしまうことで、このミスが引き引きされます。
これを修正するためには、まず正しい体重移動を身につけることが鍵となります。バックスイングで右足に乗せた体重を、ダウンスイングからインパクト、フォローにかけてスムーズに左足へ移動させる意識を持ちましょう。練習場で左足一本で素振りをするなど、左足に体重が乗る感覚を体に覚え込ませるのも良い方法です。
また、アドレス時の前傾角度をスイング中に変えないことも重要です。ボールを打ちたいという意識が強すぎると、インパクトで体が起き上がったり、逆に沈み込んだりしてしまい、スイング軸がブレてダフリの原因になります。
練習法としては、ボールの少し先(ターゲット方向)にティやコインなどを置き、ボールと一緒にそれらを打ち抜くイメージでスイングするドリルが効果的です。これにより、スイングの最下点をボールの先に持ってくる意識が養われ、クリーンなインパクトが身につきやすくなります。
2023年のゴルフルール改正による空振りの取り扱いまとめ
- 空振りはボールを打つ意思があれば1打としてカウントされる
- 素振りは打つ意思がないため打数にカウントしない
- ティイングエリアでインプレー前に素振り中に偶然ボールに当たっても無罰でリプレース
- 現在の空振りに関するルールは2019年の改定が基礎となっている
- ティイングエリア内での空振りは1打だがペナルティはない
- ティイングエリア内なら無罰で再ティアップして打ち直せる
- ティイングエリア外での空振りはボールはあるがままでプレー
- 空振りの原因は技術的な問題とメンタル的な問題に大別される
- ヘッドアップやスイング軸のブレが空振りの主な技術的要因
- OBのペナルティは1罰打で元の場所から打ち直しが基本
- ロストボールも1罰打で3分以内に見つからない場合に適用される
- 誤球のペナルティはストロークプレーで2打罰と非常に重い
- プレー不可能な状況ではアンプレヤブルを宣言し1罰打で救済を受けられる
- チョロやダフリは体重移動や前傾姿勢の維持で防ぐことができる
- ルールを正しく理解し冷静に対処することがスコアメイクに繋がる