
ゴルフを楽しんでいると、時には一つのホールで大叩きしてしまい、心が折れそうになることがあります。2019年にゴルフのルールが大幅に改正され、こうした状況に対応するための新しい選択肢が生まれました。
ゴルフの新ルールではスコアに上限を設けることが可能になり、プレーファストのため改正ルールの一環として、ギブアップがより身近なものになっています。しかし、ギブアップはダブルパーで計算するのか、あるいはアンプレアブルとはどう違うのか、バンカーやグリーンで知っておきたい新ルールとの関連性、OBやワンペナの扱い、そしてギブアップのマナーなど、疑問に思う点も多いのではないでしょうか。
この記事では、ゴルフのギブアップに関する新ルールを徹底的に解説し、あなたの疑問を解消します。
- ギブアップの新ルールとスコア上限の基本
- ダブルパーや3倍打数などスコア計算の方法
- バンカーやアンプレアブルなど状況別の対処法
- スムーズなプレーに繋がるギブアップのマナー
ゴルフギブアップの新ルールでスコアはどうなる?
- ゴルフの新ルールはスコア上限を設定できる
- ギブアップでスコアはダブルパーになる?
- ローカルルールならギブアップは3倍打数も
- スムーズな進行を助けるギブアップのマナー
- アンプレアブル宣言とギブアップの違い
- スコアとバンカーギブアップの正しい処置
ゴルフの新ルールはスコア上限を設定できる

2019年のルール改正で、ストロークプレーの新しい競技形式として「最大スコア」が導入されました(ゴルフ規則21.2)。これは、プレーヤーの1ホールあたりのスコアに上限を設けることができる、というものです。
このルールの主な目的は、プレー時間の短縮、つまり「プレーファスト」の促進にあります。特定のホールで大叩きしてしまっても、設定された最大スコアに達した時点でそのホールのプレーを終了し、ボールをピックアップして次のホールへ進むことが推奨されています。
これにより、旧ルールでは競技失格となっていた「ホールアウトしない」という行為が、この形式を採用した競技では正式に認められるようになりました。最大スコアの設定は、コンペの委員会や主催者がローカルルールとして自由に決めることができ、ゴルフをより気軽に楽しむための画期的な変更点と考えられます。
ギブアップでスコアはダブルパーになる?

ギブアップした際のスコアをどう記録するかは、そのラウンドで採用されているルールによって異なります。特に「最大スコア」の形式では、「ダブルパー」や「ネットダブルボギー」が上限として設定されることが多くあります。
ダブルパー
ダブルパーとは、そのホールのパー(規定打数)の2倍の打数を上限とする考え方です。例えば、パー4のホールなら「8打」、パー5なら「10打」がそのホールでの最大スコアとなります。非常にシンプルで分かりやすいため、多くのプライベートコンペなどで採用されています。
ネットダブルボギー
もう一つ、世界共通のハンディキャップ制度「ワールドハンディキャップシステム(WHS)」で採用されているのが「ネットダブルボギー」です。これは、各プレーヤーのハンディキャップに応じて上限スコアが変わる、より公平な方式です。
計算式は「パー + ハンディキャップストローク + 2打」となります。 例えば、ハンディキャップが18(各ホールに1打)のプレーヤーがパー4のホールで叩いた場合、上限スコアは「4打(パー)+ 1打(ハンデ)+ 2打 = 7打」となります。初心者などでハンディキャップが最大の54(各ホールに3打)であれば、パー4での上限は「4打 + 3打 + 2打 = 9打」です。
このように、ギブアップ時のスコアが必ずしもダブルパーになるわけではなく、採用されているルールによって上限の考え方が変わる点を理解しておくことが大切です。
ローカルルールならギブアップは3倍打数も

「ギブアップしたらパーの3倍」という話を聞いたことがあるかもしれません。これは、特に昔からある仲間内のコンペやプライベートなラウンドで採用されていることが多い、日本独自の慣習的なローカルルールです。
このルールの場合、パー3のホールなら「9打」、パー4なら「12打」、パー5なら「15打」をそのホールのスコアとして記録します。公式なルール改正で導入された「最大スコア」とは異なり、あくまで非公式な取り決めです。
この「パーの3倍」ルールは、特に初心者や大叩きしてしまったプレーヤーを救済し、プレーの進行をスムーズにする目的で生まれました。しかし、スコアが非常に大きくなるため、ハンディキャップ算出などには馴染まない側面もあります。
そのため、最近では前述の「ダブルパー」や「ネットダブルボギー」を上限とする方が一般的になりつつあります。コンペなどに参加する際は、ギブアップの際のスコア上限がどのように設定されているか、事前に確認しておくと安心してプレーできるでしょう。
スムーズな進行を助けるギブアップのマナー

ギブアップは、大叩きを防ぐだけでなく、プレーファストを実践するための重要なマナーの一つと考えられます。しかし、使い方を誤ると、かえって同伴者に不快な印象を与えかねません。
最も大切なのは、ギブアップを宣言するタイミングです。例えば、バンカーで何度も失敗し、既に上限スコアを大幅に超えてから「ギブアップします」と宣言するのはマナー違反と見なされることがあります。周囲は「もっと早く決断してほしかった」と感じるかもしれません。
理想的なのは、「このまま続けても上限スコアを超えてしまいそうだ」と判断した早い段階で、自らギブアップを選択することです。例えば、「すみません、ここはギブアップして先にグリーンに向かいます」と同伴者に一声かけることで、スムーズな進行に協力する姿勢を示すことができます。
ギブアップは、決してプレーを諦めるというネガティブな行為ではありません。自分自身の精神的な負担を減らし、同伴者や後続組に配慮することで、全員が気持ちよくラウンドを続けるための賢明な選択肢なのです。
アンプレアブル宣言とギブアップの違い

「ギブアップ」と混同されやすいルールに「アンプレアブル」がありますが、この二つは目的も意味も全く異なります。
アンプレアブルは、「ボールがプレー不可能な状態にある」とプレーヤー自身が判断した際に、1打罰または2打罰を払い、ルールに定められた救済措置を受けることです。例えば、木の根元や深い茂みなど、物理的にスイングできない状況で宣言します。重要なのは、アンプレアブルはあくまでそのホールを継続してプレーするための手段である、という点です。
一方、ギブアップ(最大スコア形式)は、そのホールのプレー自体を断念し、ホールアウトせずに終了することを選択する行為です。
以下の表で、両者の違いを整理します。
項目 | アンプレアブル | ギブアップ(最大スコア) |
---|---|---|
目的 | ホールを継続するための救済 | ホールのプレーを終了する |
宣言の状況 | ボールがプレー不可能な状況 | スコアが大叩きになった、またはなりそうな状況 |
スコア | 1打罰または2打罰を加えてプレー続行 | 設定された最大スコア(例:ダブルパー)を記録 |
適用範囲 | ペナルティエリアを除く全ての場所 | ローカルルールで「最大スコア」が設定された場合 |
このように、アンプレアブルはプレーを続けるための「救済」、ギブアップは大叩きを避けてプレーを円滑に進めるための「選択」と理解すると分かりやすいでしょう。
スコアとバンカーギブアップの正しい処置

ゴルファーにとって悩みの種であるバンカー。特に、あごの高いバンカーや目玉になってしまった状況では、何度打っても脱出できずに大叩きの原因となることがあります。
このような状況でギブアップを選択する場合も、処置は他の場所と同じです。そのラウンドで定められた「最大スコア」をスコアカードに記入し、ボールを拾い上げてそのホールを終了します。
ただし、ギブアップを決断する前に、2019年のルール改正で追加されたバンカーからのアンプレアブルの選択肢を知っておくと役立ちます。旧ルールでは、アンプレアブルを宣言してもバンカー内からプレーを再開する必要がありましたが、新ルールでは「2打罰」を支払うことで、バンカーの外(ホールとボールを結んだ後方線上)にドロップしてプレーを続けることができるようになりました。
何度もバンカーショットを試みてスコアを重ねるより、この2打罰の救済を受けた方が結果的にスコアを抑えられる可能性があります。ギブアップという最終手段を選ぶ前に、こうしたルール上の救済措置を有効活用することも、賢いコースマネジメントの一つと言えます。
知っておきたいゴルフギブアップの新ルールと関連知識
- グリーンで知っておきたい新ルールのポイント
- バンカー・1ペナ・OBのプレーファスト改正ルール
- マッチプレーにおけるコンシードとの違い
- プロの試合でもギブアップは適用される?
- まとめ:ゴルフのギブアップと新ルールを理解しよう
グリーンで知っておきたい新ルールのポイント

プレーファストは、ギブアップだけでなく、ラウンド中の様々な行動によって実現できます。特にグリーン周りでの時間短縮に繋がる新ルールとして、「ピン(旗竿)を立てたままパッティングできる」という変更点はぜひ覚えておきましょう。
旧ルールでは、グリーン上でパッティングする際にボールがピンに当たるとペナルティが科せられたため、必ず誰かがピンを抜く必要がありました。しかし、新ルールではピンにボールが当たっても無罰となり、抜かずにプレーすることが認められています。
これにより、ピンの抜き挿しにかかる時間が短縮されるだけでなく、ロングパットの際にカップまでの距離感をつかむ目印としてピンを活用するプレーヤーも増えました。誰がピンを抜くか気にしたり、同伴者を待たせたりする必要がなくなり、自分のプレーに集中しやすくなるというメリットもあります。
このように、ギブアップに至る前の段階でプレー時間を短縮できるルールを積極的に活用することが、ゴルフ全体の流れを良くすることに繋がります。
バンカー・1ペナ・OBのプレーファスト改正ルール
プレーファストを促進するためのルール改正は、グリーン上だけでなくコースの様々な場所で行われました。ギブアップを選択する機会を減らすためにも、知っておくと便利な主な関連ルールをいくつか紹介します。
バンカー内のルースインペディメント
以前はバンカー内で木の葉や小石などのルースインペディメント(固定されていない自然物)に触れるとペナルティでしたが、新ルールでは罰なしで取り除けるようになりました。これにより、ボール周辺の状況を改善し、より良い条件でショットを打つことが可能になっています。
ペナルティエリア(旧1ペナ)
赤杭や黄杭で示されるペナルティエリア(旧ウォーターハザード、通称1ペナ)では、地面や水面にクラブが触れても無罰となりました。これにより、ボールが打てる状態であれば、より積極的にそのままプレーを続ける選択がしやすくなっています。
OB時の新ローカルルール
ティーショットがOBになった場合、これまでは1打罰を加えて元の場所から打ち直すのが基本でした。新しく追加されたローカルルールでは、2打罰を払うことで、OBラインを横切ったと推定される地点の近くからプレーを再開できるようになりました(通称「前進4打」)。これにより、ティーイングエリアに戻る手間と時間が大幅に削減され、プレーの遅延を防ぐ効果が期待できます。
これらのルールは、いずれもプレーの進行をスムーズにするためのものです。正しく理解し活用することで、大叩きのリスクを減らし、ギブアップを選ぶ場面そのものを少なくすることができるでしょう。
マッチプレーにおけるコンシードとの違い

ゴルフの競技形式には、18ホールの合計スコアを競う「ストロークプレー」の他に、1ホールごとに勝ち負けを決める「マッチプレー」があります。このマッチプレーで使われる「コンシード」という言葉が、ギブアップと混同されることがあります。
コンシードとは、そのホールでの敗北を相手に伝える(譲る)行為です。例えば、相手がすでにカップインしている状況で、自分があと数打かかると判断した場合、パットを続ける前に「OKです」「コンシードします」と伝えることで、そのホールを終了させます。また、相手のボールがカップに非常に近い場合、次のパットが入るものと見なして「OK」を出すのもコンシードの一種です。
ストロークプレーでのギブアップが「自分自身のスコアを確定させる」行為であるのに対し、マッチプレーでのコンシードは「相手にそのホールの勝ちを譲る」行為であり、対戦相手がいて初めて成立する概念です。両者は似ているようで全く異なるルールなので、プレーする競技形式に応じて正しく使い分けることが求められます。
プロの試合でもギブアップは適用される?
アマチュアゴルファーにとって便利なギブアップ(最大スコア)のルールですが、プロの公式なストロークプレー競技で適用されることは基本的にありません。プロの試合では、いかなる状況であっても、全てのホールを最後までホールアウトすることが原則とされています。
テレビ中継などで、プロが深いラフや林の中で信じられないような大叩きをしながらも、懸命に1打を重ねる姿を見ることがあります。これは、全てのプレーヤーが同じ条件下で最後までプレーするという、競技ゴルフの厳格な公平性に基づいています。
ただし、例外として「ライダーカップ」や「プレジデンツカップ」のような団体戦のマッチプレー競技では、前述の「コンシード」が頻繁に見られます。これは戦略的な意味合いも持ち、勝負が決したホールを早めに切り上げることで、体力を温存したり、次のホールに向けて精神的な切り替えを行ったりする目的があります。
したがって、我々が目にするプロの試合形式によって、ギブアップやコンシードの扱いは大きく異なると言えます。
まとめ:ゴルフのギブアップと新ルールを理解しよう
この記事で解説した「ゴルフのギブアップと新ルール」に関する重要なポイントを以下にまとめます。
- 2019年のルール改正で「最大スコア」の競技形式が導入された
- 最大スコアは1ホールのスコア上限を定め、プレーファストを促す
- 最大スコア形式ではホールアウトしなくても失格にならない
- 上限スコアは「ダブルパー」や「ネットダブルボギー」で設定される
- ネットダブルボギーはハンディキャップに応じた公平な上限スコア
- 「パーの3倍」は昔ながらの非公式なローカルルール
- ギブアップは大叩きしそうになった早い段階で宣言するのがマナー
- ギブアップはプレーを円滑に進めるための賢明な選択肢
- アンプレアブルはプレーを続けるための救済措置でギブアップとは異なる
- バンカーからは2罰打で外に出すアンプレアブルの選択肢もある
- マッチプレーでは敗北を認める「コンシード」というルールがある
- プロのストロークプレー競技ではギブアップは基本的にない
- プレーファストのためピンを挿したままのパットが認められている
- OB時の新ローカルルールなど、ギブアップを避けるための知識も有効
- ルールを正しく理解し、同伴者への配慮を忘れずにゴルフを楽しむことが大切